路上記32「再び日本記録更新で興奮。なぜ、マラソンは人生なのか、マラソンで人生が変わるのか」

 先週に続きスポーツの話です。天野は4年前に一旦、マラソンを辞めましたから、マラソンについてはあまり書かないでおこうと考えていました。しかし、どうしても書きたいと思わず興奮したニュースが、10月8日にテレビで放送されました。
 
 7日(日本時間)に米国で開催されたシカゴマラソンで、大迫傑選手が2時間5分50秒でゴール。再び日本記録を21秒更新しました。2月25日に開催された東京マラソンで設楽悠太選手が2時間6分11秒でゴールし16年ぶりに日本記録を更新しましたが、その7か月後に大迫選手によって更新されてしまったのです。
 
 なぜ、急速に記録が破られる程に、男子マラソンは強くなっているのか。それまで日本マラソン界の男子マラソンでは、優秀な陸上選手は実業団に所属しマラソンに転向する選手が少ないといわれてきました。
 
 大迫選手も早大時代は箱根駅伝を走り、大学卒業後は日清食品に所属していましたが、同時期にナイキ・オレゴン・プロジェクトとも契約していました。学生時代から長距離で数多くの記録を残してきた大迫選手ですから、プロのランナーとして自立することは時間の問題だったのかも知れません。以降、日清食品を離れてからは米国でトレーニングを積み始めました。
 
 そして、現在の日本マラソンは2020年3月まで記録達成者に1億円が贈呈される賞金制度を導入しています。この賞金制度がマラソンランナーたちのモチベーションを高めていることも、強くなっている要因の一つに挙げられることは言うまでもありません。
 
 もちろん、誰もが記録更新に挑めるものではありません。記録は本当にマラソンの頂点を争う選手だけが挑むのです。しかし、一方で日本人はマラソンが好きな民族です。ずっと続いているマラソンブームが全てを証明しています。
 
 では、なぜ、「マラソンは人生といわれ、マラソンで人生が変わる」人がいるのでしょうか。マラソンは苦しく、楽しいものであり、時に怪我などでレースを棄権せざるを得ない状況になったりします。それでも再び、次のレースに向かい練習をはじめ、レースに出場しゴールを目指します。これは人間の生き方、人生そのものですね。
 
 また、「マラソンで人生が変わる」ことも多々あるのです。
 例えばマラソンで世界一周をした芸人の間寛平さんや、連続フルマラソン日本人走者では70歳で101日連続フルマラソンを完走した渡辺富夫さんなど、マラソンで生き方そのものが変わってしまった市民ランナーたちは多く存在します。
 
 2009年に当時65歳だった楠田昭徳さんは連続52日間フルマラソンを走りました。順風満帆な人生を送ってきた楠田さんは、40歳代後半から仕事につまずき一時期は自殺まで考えてしまいます。しかし、大学時代に箱根駅伝を走ってきた経験があった楠田さんは、再び走りだし、マラソンで先の記録を達成します。「スポーツでの苦しさを乗り切るときの努力を、うまく応用すれば、世の中の乗り切り方にも使える」と自著「いつでも夢を」(角川書店)の中で述べています。
 
 14歳で右目を失明、25歳で左目の視力が0.01以下になってしまった道下美里さんは、山口県立盲学校在学中に陸上競技と出会い、2008年からフルマラソンに挑戦。16年のリオデジャネイロパラリンピックで銀メダル、17年のロンドンマラソンでは優勝、同年の別府読売マラソンでは世界新記録を達成しました。
 普通なら目が見えなくなった人生を嘆いてしまうのですが、道下さんはそんな自分をマラソンを通じて変えてしまったのです。著書「可能性は無限大 視覚障がい者マラソン 道下美里」(文・高橋うらら、新日本出版社)の中で道下さんは、「夢を持つこと、あきらめないこと、感謝の気持ちを忘れないこと」が大事で「もしピンチになったら、自分は選ばれた人なんだ、くらいの気持ちをもって乗りこえていってください」と話しています。
 
 話は変わりますが天野自身もマラソンを走ることで人生が変わったと認識している者の一人です。スペースの都合上、詳しくは話せませんが、マラソンやトレイルを始めて6年目のことです。山中を走っていた時に、以前以後を通じて自分自身について深く考えることになった「ある存在」に遭遇したことが何度かあります。この体験を契機に身体をフルに使うことで、より精神的に深く入りこんでいきました。
 
 関連したお話ですが、最近、出版された「限界を乗り超える 最強の心身~チチベッ高層が教える瞑想とランニング」(サキョン・ミパム著、松丸さとみ訳、CCCメディアハウス)は、チベット仏教の高層でマラソンを走る著者が、マラソンと瞑想について書いた本です。著書の中でミパム僧侶は「呼吸を受け入れ、呼吸に感謝すること、そして呼吸のプロセスと密にかかわることが、マラソンと瞑想のカギになる」と述べています。

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