BOOK・55「複雑かつ不安定な世界で、企業経営における『アート』と『サイエンス』を考える。エリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」

 3月も下旬に入りました。21日の祝日には東京、福岡、横浜でサクラが開花したと気象庁が発表しました。天野が仕事をする場所にもサクラの木があり、桃色の花びらが目立ち始めています。

 サクラの開花を見ようと前日の20日には都内の靖国神社に大勢の人々が駆けつけましたが、「日本は平和です」と気象庁の担当者が話していた通り、今年の3月は日本では目立った災害は発生しませんでした。

 現在、サクラはヨーロッパや米国、中国などでも分布されているようですが、サクラを観賞しながら、飲み会や食事会をする花見は日本人独特の習慣でもあります。景気はよくない状況が続いていますが、それでも他国に比べれば平和な日本にサクラは欠かせないですね。何か綺麗なサクラの花を見ると、ほっと心が安まるのは多くの日本人に共通している意識だと思います。

 今日、紹介するのはサクラの鑑賞にも関連する「美意識」をテーマにした本です。売れていて今年の1月に16刷が発行されています。「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか~経営における『アート』と『サイエンス』」(山口周著、光文社新書)は、「日本の人事部『HRアワード2018(書籍部門)最優秀賞』、「ビジネス書大賞2018準大賞」も受賞しました。著者の山口周さんは、慶応義塾大学文学部哲学科を卒業し、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程を修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発、人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画しています。 




 現在、世界経済はグローバリズムの拡大やGAFAの台頭、また国内では日本を代表する大手企業の不祥事が発覚するなど激動の中にあります。同著には現在のように複雑化かつ不安定化した世界経済やビジネス社会で勝ち残っていくためには何が必要なのか、強い企業はどんな人材や組織を率い、企業体質を強化しているのかが書かれています。

 ダイソンの細長い掃除機や羽のない扇風機を知らない人は少ないと思います。著書が冒頭で書いているのが、創業者のジェームス・ダイソン氏が世界で唯一・修士号や博士号を授与できる美術系大学院大学の英国のロイヤルカレッジアートで、プロダクトデザインを学んでいたことです。この大学で数年に拡大しているビジネスが「グローバル企業の幹部トレーニング」です。

 「論理」よりも「感性」が大切
 これら企業幹部は功利的な目的のために「美意識」を鍛えている、なぜなら、これまでのように「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営をする、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、複雑で不安定な世界でビジネスの舵取りをすることはできないと主張します。

 iPodより早く携帯できる「ポータブル音楽プレーヤー」として発売されたソニーのウォークマンがあります。この製品はソニー創業者・井深大氏が「海外出張の際、機内で聞ける高品質音楽プレーヤーが欲しい」の一言で開発され、共同創業者の盛田昭夫氏が気に入り製品化のゴーサインが出ました。
 ソニーの会社設立の目的は「真面目な技術者の技能を発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」とされ、「面白いのか、愉快なのか」という「感性」を大切にしていることが、ウォークマンの開発秘話からも分かります。

 携帯音楽プレーヤーでは、のちにデジタルオーディオプレーヤー「iPod」を発売したほか、5色のカラーパソコン「iMac」を投入するアップルのステーブン・ジョブスは、いわゆる「論理的」「理性的」でなく、「直感的」で「感性的」な感覚の持ち主だったことは誰もが認めることだと思います。

 そしてなぜ、「エリートは美意識を鍛えるのか」の回答の一つとしては、エンロン事件を例に挙げ「犯罪を犯さないため」と書いている点が注目されます。
 エンロンのCEOだったジェフリー・スキリング氏は、ハーバード・ビジネス・スクール卒業後、マッキンゼーで史上最年少のパートナーとなった経歴を持つエリートです。エンロンの創業者から誘われCEOに就くのですが、以降、組織ぐるみの粉飾決算に手を染め、実刑判決を受けることになります。強い「達成動機」が、身の破滅を招いてしまいました。
 では「美意識をどう鍛えるのか」については、絵画を見る、ビジュアルアートを用いたワークショップに参加することなどを具体的な内容を交え紹介。「見る力」を鍛えることで「パターン認識」から自由になれることなど挙げています。
美意識1

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA