Book70(Manga).「現実と向き合い、強くある、とは。車椅子バスケットボール選手を軸に描く 井上雄彦『リアル』4年半振りに再開」

マツモトキヨシ

 4年半ぶりに再開した名作「リアル」
 井上雄彦さんの漫画「リアル」が「週刊ヤングジャンプ」(集英社)最新号(1922号)の6月6日号で再開するという知らせが、天野のツイッターに届いたのは5月22日の夜のことでした。翌日の早朝に駅のホームでツイッターを開き、当日が発売日であることを知りました。

 その瞬間に今週のブログ記事の内容を決めましたが、驚いたのは電車を待つホームで、天野の目の前で漫画本を立ち読みしている人が、まさにその「リアル」掲載号を読んでいたことです。表紙が「リアル」の主人公の一人である戸川清春だったことから分かりました。


 紙の文庫本を読む高齢の人は電車内でよく見かけますが、紙の漫画本を読む人を見かけたのは久し振りでした(もちろん漫画をケータイやスマホ、iPadなどで読む人は多くみかけます)。
 しかも、それが自分の愛読してきた漫画の再開号となると・・・・。電車の中で向かいの席に座り真剣に「リアル」に目を通す30代(おそらく)の男性を見ながら、ますます早く読みたいという気持ちが高まってきました。
 
 

 最新号では戸川、高橋、野宮が再会
 「リアル」は車椅子バスケットボールチームの「東京タイガース」に所属する戸川清春、バイク事故によってナンパした女性を半身不随にしてしまったバスケットボール好きの野宮朋美、そしてトラックに轢かれ脊髄を損傷した調布ドリームスの高橋久信を中心に描く物語で、1999年から「週刊ヤングジャンプ」で掲載がスタートし、2014年11月で休載となっていました。
 

 現在、「リアル」(ヤングジャンプ・コミックス)のコミックは14巻まで発売されています。もちろん再開された85話は、14巻からの続きということになります。14巻では高橋がプロレスラーのスコーピオン白鳥の闘いに感動し、車椅子バスケットを始めることを決意し「調布ドリームス」に入団。

 一方、「東京タイガース」は「福岡ホークス」が出場を辞退したことにより、ジャパンオープンへの繰り上げ出場を決めます。また戸川は連絡の途絶えていた筋ジストロフィーの山内仁史から連絡を受け会いにいきます。
 第85話では同トーナメント戦で「調布ドリームス」と「ウォリアーズ」が闘い、この試合を通じて戸川、野宮、高橋の3人が再会するのです。

 

 漫画の世界を超えた広い活動領域
 井上さんは高校バスケットボールを題材にした「SLAM DUNK」(ジャンプ・コミックス全31巻・集英社)(1憶4000万部以上を発行)や、原作「宮本武蔵」(吉川英治著)をもとに描いた「バカボンド」(モーングコミックス既巻37巻・講談社)を描いています。この「SLAM DUNK」や「リアル」がきっかけで、実技も注目され選手や試合はもちろん、バスケッボールトの人気が高まったことは言うまでもありません。
 

 また井上さんは手塚治虫文化賞大賞やメディア芸術祭大賞など多くの賞を授賞しており、5月23日から8月26日まではロンドンの大英博物館で「Manga」展にも作品を出展しています。

 展覧会では2008年~10年に「井上雄彦 最後のマンガ展」を東京・大阪・熊本で開催したほか、2014年には「ガウディ×井上雄彦-シンクロする創造の源泉-」を、2011年に真宗大谷派東本願寺の依頼により屏風「親鸞」を描いています。

 
 障害を越え、強くあるということはどういうことか
 連載を再開した「リアル」について井上さんは「REAL 10thAnniversaryPV-KajiriVresion」(ユーチューブ)のインタビューで以下に述べています。
 「車椅子バスケットの選手というのは、ある意味で一度は死んで、それを乗り越えて今があります。障害とは何なのか、また皆も生きてい上で壁がありますが、それをどう乗り越えていくのか。このテーマは、ほかの人も同じだと思う。試練を通して人の強さとは何か、強さそのものよりも、強くあるとは、どういうことなのかを描いています」

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