Book(Manga).63「災害に負けずに戦後を生きる少女を描く浦沢直樹『あさドラ』第1巻と19年振りの最新短編集『くしゃみ』」

 ゴールデンウィークも半ばに入りました。この時期はいつも気候的にも過ごしやすく、台風や大雨も少ないですね。暑い夏やその頃に増える台風などに備え、体力や生活面を整えるという意味でも重要な期間になります。あと1か月も過ぎれば日本は梅雨となり、台風が増え、暑い夏がやってきます。年々、暑い期間が長くなっていることや、気温の高さ、そして台風の数、台風の規模が気になるところです。
 

新作は11年振りの連載開始と19年振りの短編集
 さて、話は変わりますが、今回に紹介するのは浦沢直樹さんの新作「あさドラ(1)」(小学館)と「くしゃみ 浦沢直樹短編集」(同)です。「あさドラ(1)」は「週刊ビックコミックスピリッツ」にあの名作「21世紀少年」以来、11年ぶりに連載を開始した漫画で、浅田アサという12歳の少女が主人公です。
 
 浦沢作品には「MONSTER」「MASTERキートン」とは対照的に「Happy!」や「YAWARA!」など少女や女性を主人公にした漫画が多いのも特徴の一つですね。「あさドラ」も女性が主人公で、冒頭は2020年の東京に災害が発生する衝撃的な幕開けから、1959年に名古屋を襲った伊勢湾台風の画面へと一転します。「Happy!」や「YAWARA!」など常に時代と呼応するテーマを設定してきた浦沢さんが新作第1巻で描くのは、伊勢湾台風の災害に遭遇しながらも負けずに懸命に生きようとする少女の姿です。
 
 「あさドラ(1)」ではアサがある男に誘拐されてしまいます。男は南方での戦争経験者で、7人の乗組員を無事に故郷に運ぶために、敵の攻撃を受けながらも陸上攻撃機(飛行機)を操縦していました。日本に帰国後、仕事に失敗し路頭に迷っていたのです。しかし、そんな二人に容赦なく台風が襲ってきます。台風は東日本大震災を彷彿させるような迫力のある絵として全編を通して描かれています。

 

「本が人を救うことがある。そういうものを創りたい」(浦沢) 
 浦沢さんは手塚治虫文化賞大賞を2度受賞している唯一の漫画家で、コミックスの売り上げが国内で1億2700万部を発行しています(ウイキペディア)。本業の漫画だけでなく、大学教授やラジオのDJからテレビ番組出演まで幅広く活躍しているので、漫画好きはもちろん、一般の人でも知らない人は、いないのではないかと思います。
 
 2015年から17年まではNHKのEテレでは浦沢さんが、活躍中の漫画家にインタビューしながら、創作秘話や創作模様をドキュメントで放送する「漫勉」も放送されました。「漫勉 浦沢直樹」では、本人が「BILLY BAT!」の最終回のネーム入れ、ペン入れまでが映像として公にされました。
 
 「BILLY BAT!」最後のシーンでは少年が本を高く掲げるシーンが3度の下書きを経て描かれる様子を放送しています。「本が本当に大事でした。図書館で小学生の女の子が本を開いて、驚いたり関心したりする様子を見たことがあります。本がその人を変えたり、救ったりすることはあると思います。そういうものを創りたいですね」と番組の中で、浦沢さんは、本を掲げる少年のコマについてのエピソードを話しています。

 そんな浦沢さんの最新刊は4月末に発売された「くしゃみ 浦沢直樹短編集」(小学館)で19年振りの短編集です。「くしゃみ」とはふいに出てしまうものを指し、長編と対をなすものと定義されています。
 
 この作品集には「DAMIYAN!」「月に向かって投げろ!」「親父衆」「いっつあびゅてぃふるでぃ」など8編が収録されています。「いっつあびゅてぃふるでぃ」はフォーク歌手で友人の遠藤賢司さんから聞いた話を漫画化しています。井上陽水さんや遠藤さんたちが無名時代に、地方の公演後に出かけたストリップ劇場でのエピソードがノスタルジックに描かれています。他にも手塚治虫文化賞記念ムックに書いた作品など読み応えのある作品がラインナップされています。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA